2025年度、家村ゼミの4月。
- 展覧会設計ゼミ
- 4月30日
- 読了時間: 4分
更新日:5月11日
多摩美に入学してから3度目の春がやってきました。このところ八王子では良いお天気が続いていて、大学構内の草花もまばゆくキラキラしています。
心待ちにしていた家村ゼミへの参加がついに叶う、そう胸を踊らせていたのも束の間、配布されたゼミの所属名簿を見た私は愕然としました。ゼミ生がたったの6人しかいない。ろくにん!展覧会を開催するということで、本来ならば人手は幾らあっても足りません。そのうえ、指導者である家村先生は、ヴェネチア・ヴィエンナーレのお仕事で現地へ出張したりとご多忙な1年です。一体どうなってしまうのだろうか……。
うっすらと雲がかかったような気持ちで迎えた1回目の活動日。しかし、くだらない心配は無用でした。
まずは参加者について。名簿に記載されていた面々に加え、卒業生の先輩お三方と、編入生が1人加わってくれることになりました。家村先生や乗田先生も合わせて12人揃うと、ゼミ室は程よく満員です。更に喜ばしいことに、どの方も学科の中でも特に尊敬と信頼を抱いている相手で、「一緒にどんな活動をしていけるだろう」とワクワクします。先輩が持ってきてくれた旅行のお土産などを食べながら、初日は和やかに進んでいきました。
余談ですが、そのほかに嬉しかったこともご紹介させてください。私は東京都交通局のバスのキャラクター「みんくる」が大好きで、大学にも時々フィギュアやぬいぐるみに付いてきてもらいます。ゼミ室でふと思い立ち、彼らを取り出したところ、ゼミのメンバーにも可愛がってもらえました!写真は岡山土産のきびだんごを載せられているみんくるです。

1週間後、2回目の活動日。家村先生がついにヴェネチアへ渡航されてしまいました。やや心もとなさを感じつつ、複数の展示案を検討していきます。初回から各案について意見の交換を重ねているものの、いずれも一長一短あり、話はだんだんと平行線に……。閉め切った部屋の空気がなんだか重く感じ始めた時、ふと1人の先輩が「アートテークの模型を出してみようか」と仰いました。アートテークとは、家村ゼミ展の会場となる多摩美内のギャラリーです。そうしましょう、と部屋の隅に積まれていた建築模型を全員でいそいそ組み立ててみます。
全てのパーツが位置に収まったところで、誰かが窓のカーテンを開けました。途端にぱあっと広がったのは、レモン色の西陽です。小さな展示室に柔らかい光が差し込みます。一気に心が上向いて、声が弾む私たち。その場にあった紙切れや爪楊枝を展示室内に置き、簡易的な実験をしながらお話をしました。「パソコンの画面に木の写真を表示して、窓から見える景色を再現してみる?」「こっちの箱に人のミニチュアがありましたよ!」「初めての来場者だね」。

みんなと手や口を動かしつつ、頭に浮かんだのは2年前の家村ゼミ展「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」についてでした。あの時に印象深かったのは、床のコンクリートの模様が土の畝のように見えたこと。それが絵に描かれた地面と呼応して、私のいる空間から作品の中へ繋がっていけるような気がしたのをよく覚えています。家村先生は「凄く偶然のことで、壁に掛けてみるまで気が付かなかったのよ」と仰っていました。
重要なのは、展示によってその場所をどう感じられるかということです。それにも関わらず、それぞれの案が持つ意味みたいなものだけを頭の中に閉じ込めてこねくり回し、実際の空間を失念していました。こんなに大切なことを忘れてしまっていたなんてと少し恥ずかしくなると同時に、大事な感覚をきちんと取り戻せたことが嬉しくも思える体験でした。
活動はまだ始まったばかり。ひとまずは6月に迎える本物のアートテークでの実験を目標に、参加者一同頑張っていくつもりです。
2025年度の家村ゼミでは、最低でも月に1度を目安として、ゼミ生たちの持ち回りでブログを更新していきます。初回の活動日に、家村先生から「このゼミでは記録をすること、保存することも大切にしているの」とのお言葉をいただきました。良い展覧会を作るという大筋はもちろん、開催中の様子や、作り上げる過程を残していくことに意味があるというのは、新入りである私も何となく理解しているつもりです。例年作成している展覧会の記録ドキュメントに加え、もっと等身大な、ゼミ生それぞれの気持ちや思い出のかけらをそっと共有するような場所として、このブログを運用していけたら素敵だなと思っています。
芸術学科3年 山本小花
【お知らせ】
家村ゼミ展2024「空間に、自然光だけで、大竹利絵子の彫刻を置く」のドキュメントが完成しました!ゆうメール着払いでお1人様1部まで、先着100名様に差し上げます。
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