
9回目となる「家村ゼミ展 2025」は、「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」を開催いたします。
家村ゼミ展では、中村竜治との展覧会は2度目となります。
3年前に開催いたしました「中村竜治 展示室を展示」では、アートテークギャラリー1階の4つの展示室(約560平米、一部天井高9m)に、市販の白い紐だけを使用し、会期中3回の紐の設え変更を公開で行うことで「展示室を展示」いたしました。「帯」「結界」「対角線」と中村竜治が名付けたそれぞれの設えは、鑑賞者に自主的な「観察」をうながし、鑑賞者個々の目と身体で展示室を捉えなおす機会となりました。
また、アートテークギャラリーが、あらかじめ展示空間として設計された空間ではあるものの、ガラス面が多く、外光が空間に影響をあたえるという、展示空間としては特異な特徴を有することも同時に、中村は気づかせてくれました。
この中村の展覧会がきっかけとなり、一昨年「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」、昨年「空間に、自然光だけで、大竹利絵子の彫刻を置く」を開催いたしました。いずれの展覧会も、この展示室の特徴を生かし、4つのどの展示空間にも照明を使用せず、自然光だけの彩光とし、絵画あるいは彫刻を数点だけ置き、それぞれの作品が、大きな余白と距離を所有するという、アートテークギャラリー以外では成立し得ぬ展示になりました。
今年度の「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」は、上記の展覧会、空間に自然光だけで作品を置くシリーズともいえる展覧会です。
アートテークギャラリーの空間では、水を使用することが禁じられています。けれどもその空間に、およそ80 m2と300 m2、ふたつの巨大な水たまりが出現します。もちろん水による水たまりではありません。厚さ0.04mm、幅900mmの透明フィルムによる水たまりです。
光と翳、空間、天気、時間、居合わせた人々の振る舞い、そういったものから個々の目と身体が体験・体感する場であることが、ここ数年開催しているシリーズの特徴ではありますが、展示空間での事前の2回の実験から、湿度や風の存在までもが本展の大きな変容要素としてあることがわかりました。刻々と水たまりが変容することを楽しみたいという気持ちと、水たまりを水たまりの状態でどうしたら会期中保てるのか、湿度や風と折り合いをつけながら作品を守る緊張感は、日々の平穏がけっして当然ではないことを実感する現在と重なるのかもしれません。
会期:2025年9月22日(月)ー 10月10日(金)
休館日:9/28(日)、10/5(日)
開場時間:10:00−17:00
会場:多摩美術大学️八王子キャンパス アートテークギャラリー
観覧無料