top of page
執筆者の写真展覧会設計ゼミ

2024.4.27 アーティゾン美術館に行ってきました



私は根が田舎もんですから、何年東京に住もうと都会で心の底から落ち着くことなんてないわけです。まして、アーティゾン美術館なんていう東京ど真ん中の場所にあっては、遠路はるばるやってきた修学旅行生のような心持ちで、開口し呆けた顔で摩天楼を見上げる他ありません。


「田舎もんに見えるけ、シャキッとせい」


いつかの父の言葉を思い出します。しかし、いくら表面的に取り繕おうとも、不安と高揚の入り混じった心境は、その立ち居振る舞いから滲み出てしまうもので、抑えることができません。そして、アーティゾン美術館は、都会の、オシャレな、ハイセンスで、イケてる人々の巣窟であって、もし私が美大に入っていなかったならば一生行かないであろう場所です。美術館や都会に気後れするのは、自らの勝手な偏見のせいだと分かっていますが、克服には相当な研鑽が必要そうです。


スマホと周囲の建物を見比べながら、やっとのことで美術館に着いた私は、我が物顔で街を闊歩する人々を避けるようにして、館内に足を踏み入れました。集合時間ギリギリだったので、中には既に展覧会ゼミの面々がいました。多摩美以外でみんなと会うのは初めてだったので、新鮮で少し嬉しかったのですが、それを伝えられるほどの社交性が私にはないので、心の中に仕舞っておきました。





その日の流れは以下の通りです。


12:25 アーティゾン美術館1階集合

13:00 ブランクーシ展鑑賞

14:00 担当学芸員の説明

15:00 再度ブランクーシ展鑑賞


言うまでもなく、ブランクーシは偉大な作家です。そして偉大さはキュレーターの見事な仕事によって顕現されます。照明の使い方はもちろん、台座の選択、作品構成、キャプション、そのどれを取っても大変勉強になりました。ブランクーシ展は、照明と作品の関係について考え尽くされており、本展覧会の鑑賞を通して得ることのできた視点は、自然光のもとで彫刻作品を展示するという私たちの目標と思想的に合致しています。作品が自然との関わりの中で空間そのものを作品に取り込む、ということをより具体的に体現するのであれば、作品を時間とともに変化する太陽の光のもとに置くことは、まさしく正しい展示の有り様だと言えます。ブランクーシ展は従来の作品保存の原則を厳守しながら、自然光のもとで作品を展示するというラディカルで前衛的な展示のあり方を肯定するような展覧会だったのです。





その日の帰り道は、電車に揺られながら感慨に浸りました。いつも電車移動中の暇な時間は、スマホでにゃんこ大戦争かぴよ将棋をやっているのですが、その日ばかりは良い映画を見たあとのような清涼感と寂寥感から、目を閉じざるを得ませんでした。


多摩美術大学芸術学科3年 川田宗志郎


閲覧数:316回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Commentaires


bottom of page